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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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*現代パラレル
*以前ツイッタか何かで見かけたネタをゾロサン変換して膨らませました。

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 平日の終電。初めは空席の殆ど無かった座席も、櫛の歯が欠ける様に空いていく。
 しかしゾロの隣には、ずっと同じ男が座ったままだ。余程疲れているのか、ぐっすりと寝ている。電車の揺れに合わせて、頭がぐらぐらと揺れている。
 ある時、こてん、とゾロの肩に頭が乗って以降、その金色をした小さい頭は、ゾロの肩の上をぐりぐりと押したり、前後に滑ったりし続けている。
 特に歓迎する様なものでもないが、半分眠りの淵にあったゾロの意識は、それを特段邪魔なものとは認識せず、従って半分眠るゾロの肩の上に、完全に眠る頭は、その位置をずらしながらも乗ったままだった。

 電車がやや乱暴な動きを見せ、その拍子に大きく動いた金の頭が「いてっ」と声を出した。
 その声に目を覚ましたゾロは、自分の肩と金の頭が、金糸を介して繋がっているのを見た。
 本日ゾロが着ているのは、友人が誕生日プレゼントだと寄越した小洒落たシャツで、肩の所に飾りボタンが付いている。本来ゾロは小洒落たシャツなどという存在とは対極に位置する男だが(なにせ家では緑の毛糸の腹巻きを愛用している)、着脱に面倒がなく(飾りボタンでなくそれを外さなければ脱げないのであればゾロは二度とそれに袖を通さなかったであろう)、生地の肌触りも良く、なにより自分の体型に良く似合っていたそのシャツは、それなりに気に入っていた。それどころか、それを着ていれば「なにあんた寝間着で来たの?」等と友人に罵倒される事も無いので、重宝していたと言って良い。
 どうやら、そのボタンに金の頭の髪が絡み付いてしまったらしい。目を覚ましたらしい金の頭は、自由に動かない頭に戸惑っていた。
「すみません、絡まっちゃったみたいです」
「そうですね」
 金の頭は髪に手を遣り、どうにか解そうと試みている。自分の肩先で動く指を横目で見ながら、ゾロは「こりゃ無理だな」と思った。案の定、指は何の成果も出せず、金の頭は「クソっ、取れねぇ」等と呟いている。
「えーっと、これ、ハサミ入ってるんで、絡まってるとこ、切ってもらって良いですか?」
 金の頭が鞄の中から手探りでケースを出して、ゾロに差し出した。
 ゾロは右手でそれを受け取ると、左手に持ち替え、開いた右手で自分の左肩を探って、髪の絡まっているボタンを探し出した。自分の持ち上げられない左腕の代わりに、金の頭の指を誘導し周囲の髪を押さえさせた上で、ケースの中からハサミを取り出す。周りの髪を切ってしまわない様、慎重にそれを服から切り離した。

 ぷつん。

 自由になった頭を振って、金の頭が言う。
「ありがとうございました」
 ゾロは「いえ」と言って、ハサミをケースに仕舞い、金の頭の手に戻した。
「すぐ、絡んだ髪、取りますんで」
 と言って、ゾロの肩を見た金の頭が、驚いた貌をした。
 自分の頭をがしがしと探り、その中にボタンがある事に気付いた様だ。
「ボタンの方、切ったんですか?」
 ゾロは何故驚かれているのか分からない。
「いや、俺、髪の方を切って、ってつもりだったんですけど」
「勿体ないだろ、綺麗な髪なのに」
 目をまん丸にした金の頭に指を入れ、ボタンを探し当てたゾロは、絡み付いた髪を丁寧に解した。
「取れた」
 摘んで見せたボタンを、ゾロはポケットに押し入れようとしたが、金の頭はそれを止めた。
「あんた何そのイケメン」
「は?」
「せめて、ボタン付けるくらいさせて」
 車内アナウンスが、降車駅へまもなく到着すると告げている。
「いやでももう降りるし」
「うん、俺も降りるから」

 電車を降りたら、駅員に追い立てられる様に改札を出され、駅前のベンチに落ち着いた。
「ごめんな、こんなオシャレなシャツ」
 薄ぼんやりとした照明の下で、金の頭はハサミの入っていたケースを取り出し、その中から針と糸を取り出して、ちょちょいとボタンを取り付け始める。
 深夜とは言え往来で半裸になるのも憚られ、金の頭も脱げとは言わなかったから、ゾロはシャツを着たままで肩先にボタン付けをされており、暫し動く訳にはいかない。手持ち無沙汰で、ゾロは金の頭に話し掛けた。
「いつも裁縫道具持ち歩いてんのか?」
「女の子のボタンが取れそうだったり、スカートの裾がほつれてたりしたら、さっとやってあげんの。結構有効なんだぜ?」
「…そりゃ、女が男を落とす手口じゃねえか?」
「お兄さん、頭古いね。女の子はお姫様なんだから、俺に出来る事は俺がやれば良いんだよ。——ほい、出来た」
 上手いもんだ。
「ところでお兄さん、ここはどこ?」
「は? お前、ここで降りるんじゃなかったのかよ?」
「あんたが降りるって言うんだもんよ、降りるに決まってんだろ?」
「…終電、行っちまったぞ?」
「知ってるよ。乗ったの、終電だし」
「どうすんだよ、始発まで、五時間はあるぞ?」
「んー、どっか、時間潰せるとこ…」
 周囲を見渡したって、都心じゃないここにはそんなものは無い。

 南口には大掛かりな公園が広がっており、昼間は兎も角夜間はいっそ荒涼としている。北口は住宅街の入口だ。申し訳程度の商店街は、灯が消えて久しい。一軒だけあった漫画喫茶は先月潰れてしまった。24時間営業だったファーストフード店は早朝から日付が変わる迄に時間を短縮しての営業に変わった。恐らく不景気という事なんだろうが、そんな事、ゾロは知らない。ゾロが知っているのは、この駅近辺で始発迄時間を潰せる様な場所は無いという事だけだ。
 少し先に行けばコンビニはあるが、四時間も五時間も居座る訳にはいくまい。大体車内であれだけ気持ち良さそうに寝ていたのだ、眠たいのだろう。いくら若いとはいえ、徹夜は体に堪える。
 いい陽気の季節とは言え、深夜はまだ冷える。その上雨も降り出しそうだ、月も星も隠れる程の厚い雲が、強風に流されて行く。
 袖振り合うも他生の縁。ましてやボタン付けをさせた上にこんな所に放置して風邪でも引かれたら夢見が悪い。ボタン付けをする羽目になったのは自分の所為だと言うかも知れないが、髪の方を切らなかったのはゾロのエゴだ。風邪ならまだしも、何か事件に巻き込まれでもしたら。例えば、性質の悪い輩に絡まれるとか。この金の頭は、そんな懸念を呼び起こさせる外見をしている。男ながらに。つまり、ある種の情欲を誘発する様な。

 …情欲? いやいやいや。

 ゾロは思い浮かんだ単語に意表を突かれ、頭を振る。

 そうだ夢見が悪い、だ。それは睡眠が唯一の趣味であるゾロにとって最も忌避すべき事態である。快適な睡眠の為には万難を排する必要がある。
「タクシーは呼ばなきゃ来ねぇぞ」
「そんな金無ぇよ」
「俺も無ぇ」
「ははっ、お兄さんに集ろうなんて思ってねぇよ」
 金の頭は愉快そうに笑った。

 この笑顔を消す様な事があっては、夢見が悪い。

「…来い」
「え?」
「うちで良けりゃ、毛布くらい提供してやる」



20121221,20130110,0513-15,1018-19,1024

*続く予定はありつつ(これで終わりはねェよ!)、全然出来てません。
*例によって季節感がありませんが、春と夏の間の頃です。多分。
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