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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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*純情…?

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 キッチンはもうもうとした湯気でいっぱいだった。コンロの上の大きな寸胴がその供給源だ。それが二つも。サンジはその中を交互に覗き込みながら、片方にはお玉を、もう片方には菜箸を突っ込み、何かを掬い上げるなり掻き混ぜるなりしている。己の背後でゾロが酒を飲んでいる事など、一切意識の外に遣ってしまった様だった。

 甲板にあってさらさらと風になびく金髪が、受けた蒸気でぺたりとその小さく丸い頭部に張り付いている。それでも頭頂の一部が動きに合わせてぴこぴこと揺れるのが、ゾロには面白かった。濃いブルーのシャツはいつもの様に細身のシルエットでサンジの体格にも肌の色にも良く似合うものだったが、熱源のすぐ側で蒸気を浴びてその上忙しなく動くものだから、背骨のラインと脇の下を中心に酷く汗を掻きその辺りが猶一層濃い色に変化してしまっている。捲った腕も、張り付いた髪の割れ目から覗く項も、表面はしっとりと汗が滲んでおり、時折、水分の粒子が隣同士でくっつき大きな粒となって流れ落ちる。二の腕を持ち上げて袖に額を擦り付け、その汗を拭う仕草で大きく動く肩甲骨。

 そんなものを見るとは無しに見ていたら、ゾロは何だかむずむずとした。
 労働に勤しむ仲間を手伝う事なく酒を飲んでいる自分を恥じて、などでは決してない。
 あれに触りたい。
 ゾロの視線はいつの間にか睨む程のものになっていた。
 己の掌の中で蠢く肩甲骨。汗の味。汗だか何だかで色を変えたシャツ、皺苦茶になって、ボタンの一つも千切れ飛んで。乱れる髪。乱す髪。己の手で。
 啼く、サンジ。

 そんなものを想像して、ゾロはもうどうしようもなくて、テーブルに側頭を打ち付けた。おでこでなかったのは勿論、視線をサンジから外せなかった為だ。ごんという音で、サンジは初めてゾロの方に注意を向けた。
「お前、何してんの?」
 己に睨むばかりの視線を向けたゾロが、顔を赤くしてテーブルに懐いている。
「酔った? まさかな?」
 まあ、酔っていると言えば酔っている、お前に。
 などと言える訳もないゾロは、暫くそのまま動けず、サンジの視線に居たたまれなくなり、瞼を閉じる事でそれを遮断した。


 呆れた様な息が、存外優しく笑んだ顔から吐き出された事を、目を瞑ったゾロは知らない。
 自分が笑顔である事に気付いたサンジは、それをゾロに知られていない事に安堵の息を吐いて仕事に戻った。



20130928
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