『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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鳥葬を待つ蝉がベランダにまだ居座っている。乾燥が進んだらしい、風が吹く度左右に揺れている。白い腹を晒したそれがベランダでくたばりかけているのを発見したのは先週だった。あまり見たいものではないから「どうにかしろよ」と部屋の主に言ったら「鳥が食うんじゃねぇの?」と面倒くさそうに言った。それから直ぐに伸し掛られた。
そんな事ばかりしている。
訪ねれば、先ず一回。服を剥がれる合間に隙を見て、買って来た生鮮食品を冷蔵庫に入れる。自分勝手な一回目が終われば、高鼾をBGMにシャワーを浴びる。体についた情交の痕を眺めれば、シャワーどころか手洗いうがいもする前に、と馬鹿馬鹿しくなる。バスローブを羽織って、おさんどん。匂いで目を覚ました奴に食わせて、その後に二回目。何かの拍子に体が触れれば三回目。視線が合えば四回目。体力と精力と、時間の続く限り。
この部屋で、まともに服を着ているのは玄関でだけ、来た時と帰る時、ほんの僅かの時間だけ。
出会ったのは、人数合わせで駆り出された合コンだった。花粉にやられて飲み始めた抗アレルギー薬の所為か、疲れでも溜まっていたのか、おかしな酔い方をした。
一次会はどうにか持ち堪えて、二次会の相談中に意識が途絶えた。意識が戻った時、目の前に居たのは、緑色の髪をした男だった。合コン中、碌に喋らず仏頂面で酒を飲んでばかりだったのに、女の子からの秋波を人一倍受けていた、ゾロという名の男だ。目の前に居るどころか、俺はそいつの腕の中に居た。しかもベッドの上だ。
「なに、してる…?」
「てめえの所為で女持ち帰り損ねたからな」
「俺の事なんて、捨て置けば良かったろ」
「てめえが一番、ヨさそうだった」
「てめえ、バイか」
「てめえは、ゲイだろ」
持ち帰られたゾロの部屋で、ベッドの上で、驚愕を押さえて辛うじて訊けば、あちらこちら弄られながら告げられた。実際俺はヨかったらしい。気に入られて、以来そんな事ばかりしている。
冗談の様に暴いた性癖は俺にとって好都合で。冗談の様に暴かれた性癖を、隠す必要の無い関係は思いの外心地良く。週に一二度、俺はゾロの部屋を訪れる。しかし。
恋人と呼ぶには、何か足りない。
その不足が恐らく、俺を蝕んでいる。
先週までは確かに蝉だった物体がカラカラと音を立ててベランダを転がる。鳥に攫われるか風に攫われるか、粉々になってしまうか。いずれこの世に居た痕跡さえ見えなくなるのだ。
この恋の結末を思う。
俺にとっては確かに恋だと、自覚して、一層倦む。
「何で俺がゲイだって分かった?」
「てめえが一番熱心に俺を見てた」
そうだ。おかしな酔い方をしたのは、体調の所為じゃ無い。酔えば、手に入れられると、知っていたから。
秋波。確かに送った。けれど、送られていた事くらい、分かっていた。誰よりも熱心に、俺を。見ていた、と。
「てめえだって、俺を見てたろ」
「一番ヨさそうだったからな」
「てめえはそればっかかよ」
「それ以外に何があんだ」
結婚がゴールたり得る恋愛になんて用は無い。そういう性を生きている。だったら、ゾロのそれは至言だ。しかし。
蝉みたいに、恋に生きて死ねるなら。跡形なく消えたって良いけれど。
生憎長い人生は、それを許さない。
そろそろ蝉の恋の歌は聞こえなくなるし、夜になれば虫の声が合唱を始めるだろう。
消えるのはどちらが先か、と思って俺は。
ふ、と笑った。
20130830-0902,0905
*もう何言ってんのか分からない感じも含めての、アンニュイ(だからアンニュイって何)。
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