雑踏 2013/06/06__00:00

　テレパシー？ご都合主義。ファンタジー！

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　雑踏の中、歩いていた。集団で、前になり後ろになり横になり広がり纏まり。偶々俺の左隣にコックが居た時、ルフィがコックにぶつかったか何かで、コックがふらりと蹌踉けた。腕がぶつかり、掌が、触れた。
　それは直ぐに離れた。ほんの一秒にも満たない接触。

　刹那、視線が搗ち合った。それだけで、何かが分かってしまった。全てが氷解した。
　突っ掛かる理由、悪態を吐く理由、暴言を吐く理由、苛立つ理由、それをされる理由。全て。

　雑踏に紛れ、手を、伸ばす。伸ばされた手を、掴む。視線は合わせない。互いに前を向く。しかし指は絡まっている。誰の指か分かっていて、分かられていると知っていて、離さない。
　理由全てを分かった事を、分かられている。それで良いと、互いに思っている。

　指先から伝わる熱が、それを知らせる。

　雑踏を抜けたら、仲間に見咎められる前に、コックは手を引くだろう。
　俺はそうさせまい。そうなる前に、手を掴む。強く引き寄せる。そのまま走って、仲間の前から姿を消してやる。

　俺に分からせた責任を取らせる。俺はコックに分からせた責任を取る。

　雑踏を抜けたら。
　覚えてやがれ。
　離させない。離さない。

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20130524,0602