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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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*甘めの馴れ初め話

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 *****
      



 鍛錬後なのか汗水漬くのゾロが、出してやったスペシャルドリンクを飲み干して「ぷはあ」と息を吐いた。
「ごっそさん」と言って空になったジョッキを差し出した腕がそのままフリーズしているのでどうしたのかとゾロの様子を窺うと、俺の頭を凝視している。

「俺の頭に何か付いてるか?」
 険のある声になってしまうのはご愛嬌だ。男に凝視されたら当然だろう。
「いや、ただ…お前の髪は、触ってみたいな、と」
 は?
「きらきらしてて、さらさらしてて、ぴょこぴょこしてて、なんか、触ってみてえ」
 え?
 こいつ何言ってんだろ。
 ゾロの言葉を反芻していると、ゾロが小さく笑う声が聞こえた。
「お前今、すげえアホ面だぞ?」
「なんだとてめえっ」
 ゾロが何を言ったかなんてどうでも良くなって、脚を出した。当然ゾロは刀で応戦して、結果ナミさんに怒られた。いつもの通りに。


 夕食をがっつり食った後だというのに、強いアルコールを摂取しているゾロが、今もまた俺の頭を凝視している。
 仕方なしに出してやったつまみの量が足りないとか味に不満だとかいう訳でもなさそうだ。(当たり前だ。そんな事だったら蹴り出してやる。)

「何だよ」
「いや、髪、が」
 まだそんな事言ってんのか。
 俺は自分の髪を一房掴んで、ふらふらと揺らして見せた。
「これを触りてえの?」
 ゾロが首肯く。
 意外と素直で、毒気を抜かれた。
「どうぞ?」
 一房掴んだ髪を揺らしながら、頭を椅子に座るゾロに近付けて下げてやる。
 別に減るもんじゃないし。髪の毛触られたって、痛くも痒くもないし。
 俺の顔は床を向いていたから、その時、ゾロがどんな顔をしたのか知らない。けれど、ゾロが息を呑んだのは分かった。
 次の瞬間、ゾロの手が俺の頭に触れた。

 それ、髪じゃない。頭。
 そう抗議しようと思ったら、力強く引き寄せられて、俺の頭頂部はゾロの胸板にぶつかった。
 何で?
「触りてえのは、髪だけじゃねえ」
 ゾロの、上擦った様な、掠れた様な、ちょっと普段とは違う声が聞こえて、ぐりぐりと、大きな手で頭を掻き回された。
 俺は咄嗟に、蹴った。
 ゾロの手が離れて、ゾロの体が後方に飛び、壁に激突して止まった。
 ゾロは項垂れていて、どんな顔をしているか分からない。
「ごめんっそういう事だとは思わなかったっ悪かったっ」
 うっかり謝ってしまった。
 ぐりぐりされたのは俺なのに、何で俺は謝ってるんだろう。
 ただ、謝らなきゃならない気がした。

「お前は悪くないだろ。悪かったよ、忘れてくれ」
 ゾロの声は低く掠れて、相変わらずゾロの顔は床を向いていて、そのままゾロは出て行った。

 忘れてくれったって、忘れられる訳がない。
 ゾロが、俺の髪以外も触りてえって?
 どこだよ。
 気になるじゃねえか。


「どこだよ」
 一晩気になって、そんな事に煩わされているのも腹立たしいし、気になったままでいるのも気持ち悪いし、俺が悪くないってんなら直接訊いてしまえば良いと思って、そうした。

 ゾロは虚を突かれたみたいな顔で俺を見たから、もう少し親切に言葉を足してやる。
「どこ触りてえんだよ?」
 ゾロは、ふい、と目を逸らして言った。
「全部」
 全部、って、何?
 俺の方こそ、虚を突かれた。
 ゾロは、す、と視線を俺に移してから、柔らかく笑った。
「昼間の甲板で話す事じゃねえな」
 それから、俺の頭をくしゃりと、柔らかく掻き回して、立ち去った。
 いつだよ。どこでだよ。いつ、どこでなら、相応しい話だ?
 気になるじゃねえか。


「いつ、どこでなら話すんだよ」
 本当は、分かってる。
 例えば、こんな、夜。ラウンジの隅とか。必須条件は、二人きりである事。

 やっぱりゾロは、柔らかく笑った。
「お前に忘れる気がねえんなら」
 ゾロが一歩俺に近付いた。
「遠慮無く触るぞ?」
 ゾロの手が俺の頭に伸びる。髪を一房掴んだ指が、地肌に触れる。
「全部、だ」


 俺の頭を、ゾロの遠慮無い手が掻き回している。遠慮は無いくせに、その手つきは柔らかく、こそばゆい。
「まさかそんな風に思ってるとは思わなかった」
 拗ねる様な物言いになったのはご愛嬌だ。拗ねてんだ、仕方ないだろ。
「まあ、そうだろうな」
 ゾロはその手つきよりも柔らかく、笑った。
 そうやって、大人振って。俺より先に、気付いてたみたいに。そりゃ拗ねる。
 だから俺だって、大人振る。
「煽るみたいになって、悪かったな」

「お前は悪くねえよ。お前に煽ったつもりがなくても、俺は勝手に煽られるし」
 大人振ったのがバレて、気を遣われたみたいで面映い。
 でもな、ゾロ。俺ももう、気付いてるんだ。
「——煽るつもりだったとしたら?」
「遠慮無く煽られる」
  一層柔らかく笑ったゾロは、遠慮無く触った。俺を、全部。



20130325,0326,0406
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