ニコチン中毒 2 2013/03/06__00:00

2月18日付『ニコチン中毒』続き

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　昼日中、全員揃った甲板で、俺の苛々は最高潮を迎えた。その時、コックが至近距離に居た。

　こいつの所為で。こいつが煙草なんて吸ってるから。こいつとキスなんてしたから。
　理不尽だと思った。

「責任取れ」と言って、コックの右肩を甲板に向けて押した。
　咄嗟の事にバランスを崩したコックの体が、僅かに沈む。
　屈んでそれを迎えた。
　下から掬う様に、唇を寄せる。
　コックの上唇が着地したのは、俺の下唇の上。
　徐々に大きく見開かれるコックの瞳は「何をするんだ」と伝えている。
　コックの上唇を、上下の唇で挟んで引っ張った。
　むに、と伸びたそれは溶けそうに柔らかい。
　眩暈がした。
　空いた隙間に舌を差し込み、外気に触れた歯を、舌先でなぞる。
　靡いた金髪に指を差し入れ、頭部を押さえる。「んんっ」と呻いて抵抗を見せるコックを、逃す気は無い。両手で髪を掻き乱し、舌で口内への侵入を試みる。食いしばられた歯。止む無くべろりと舐める。「んんん」と頭を振って更なる抵抗を試みるコック。クルーの視線を感じる。唖然とした。呆れた。

　舌を。唾液を。そうしなきゃ、ニコチンが入って来ない。そうしなきゃ、苛々は治まらない。

　こいつの所為で。こいつが煙草なんて吸ってるから。こいつとキスなんてしたから。
　理不尽だ。責任取れ。

　それがコックにとっての理不尽だなんて、思いもしなかった。

　散々貪って、やっと人心地が付き、嘆息と共にコックの拘束を解いた。
　戦慄いたコックに蹴り出され、クルーの冷ややかな視線を前に海水浴をする羽目に陥った。

　理不尽だ。

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20130208,0212,0214,0222

剣士御乱心