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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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 チビナスとゼフの話

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 その日の仕事全てを終えたサンジはその日最後に、己の爪にヤスリをかける。
 何者かがサンジの働き振りに感心し、誰かに彼の爪の垢を煎じて飲ませたいと思っても、それは叶わない。
 サンジの爪の間には、何も挟まる隙間が無い。従って、垢も溜まらないからだ。


 サンジのその習慣は、彼がゼフの元で修行を始めてまもなく始まった。
 ゼフは、事細かに手取り足取り指導をしてやる様なタイプの指導者ではなかったから、サンジは全てにおいて、ゼフのする事を見て、自分の為すべき事を知った。
 厨房の火を落としたゼフが一日の最後に行うのが、己の爪にヤスリをかける事だった。

 ゼフの全てを盗もうと躍起になっていたサンジは、普通子供が起きていてはいけない時間に行われるその儀式めいた作業も、つぶさに見ていた。起きているのが見つかると「ガキは早く寝ろ」と怒鳴られベッドに蹴り入れられるから、見つからない様にこっそりと。儀式が終わり、ゼフがヤスリを片付けてその場を去るのを見届けると、サンジはこっそりその小引き出しを開けた。
 ゼフの使っていた大振りなヤスリの隣に、いかにも自分の手に馴染みそうな大きさのヤスリを見つけたサンジは、それをこっそり自分のポケットに忍ばせた。

 自室でそれを、自分の爪の際に沿わせて擦ってみた。
 勢い余って指の先まで削ってしまい、うっすらと血が滲んだ。怪我をしているのを見つかるのはマズい。ゼフに鼻で笑われる。最悪、厨房を蹴り出されてしまう。ゼフがしていたのを脳裏に浮かべ、慎重に爪だけを擦っていくと、白い粉が散った。変な臭いがした。

 それからサンジは、毎晩爪にヤスリをかけた。
 働き者の手の爪は、日常作業の中で伸びるより早く削れてしまうが、それでも寝る前のひととき、ヤスリで爪を撫でる儀式は続けられた。
 いくらか伸びてからニッパーで切るのより手間はかかるが、一流コックと同じ習慣を持てるのが誇らしかった。


 最初の夜の次の夜、ゼフがヤスリを件の小引き出しから取り出した時、それを例によってこっそり覗いていたサンジは、ジジィが小さいヤスリの紛失に気付き咎められるのではないか、と気が気で無かった。ならばこっそり戻しておけば良い様なものだが、サンジはそれをしなかった。たった一夜で、そのヤスリはサンジにとって、手放したくない宝物になっていたのだ。
 幸いな事にゼフは小さいヤスリの事など気にも留めていない様だった。

 と思っているのはサンジだけで、その小さいヤスリは手の小さなサンジの為にゼフが用意したものであり、それがサンジの手元にある事などゼフはとっくに知っていた。勿論、サンジが自分を監視するかの如く見詰めているのも、自分が正しい行いをすればそれを勝手に真似するだろう事も。

 サンジからは見えないのを良い事に、ゼフの頬は弛み、口元は愉快を湛えて歪んでいた。



20120817,0821

 私は伸びるだけ伸びてから、一般的な爪切りでぱちんぱちんと切ります。
 ヤスリをかけるだなんて、そんなちまちました事やってらんない!(女子力ゼロ)

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