『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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ゾロは灯りの落ちたダイニングの扉を開けた。深夜の事だ。当然ながら、誰も居ない。キッチンで、サンジが一人、作業をしているだけ。
ちらりと闖入者を認めたサンジは、作業の手を止めもしなかった。作業台を照らすだけの灯りでは、サンジの表情も良くは判らない。サンジにも、ゾロの表情までは判らないだろう。それがゾロであることだけは分かろうが。
ゾロは止まり木に腰を下ろした。すぐに静かな低い声が届く。
「なんか飲むか」
「なにかあるなら」
「ラムなら」
サンジはそう言って、口の開いた瓶を、ほのかに明るいカウンターテーブルに置いた。
「飲んでたのか」
「ちょっとだけな。それで良いか?」
「ああ」
ゾロはサンジの飲みさしを握った。
「ツマミは?」
「いや、いい」
躊躇なく口をつける。
サンジがボウルの中身を捏ねるかすかな音と、ゾロがラムを嚥下するささやかな音が、がらんとした室内に響く。風のない夜は、波の音も遠い。
「なんか喋れよ」
ゾロはサンジの動く手を見ながら言った。
「なんかってなんだよ」
サンジも自身の手を見ている。
「なんでもいい」
視線は合わない。
「なに、『お前の声が聞きたい』って?」
サンジはからかう口調で言った。
「そうだよ」
ゾロはぶすくれて返答する。
「な、なにお前、どうしちゃったの」
当然冗談のつもりだったサンジは、たやすく動揺を見せた。
「なんでもいいだろ」
ゾロの頰から耳にかけて、少し赤くなっているのは、幸いサンジには見えない。ただゾロには、自覚があった。ちりちりと熱くなったのが、ラムの所為などではない事は。
サンジは一旦止めた手を、再び動かせた。口は、動かなかった。声が聞きたいからなにか喋れ、と言われてしまっては、なにを喋ったら良いか皆目見当付かない。作業を再開出来ただけでも御の字だ。ゾロは、自分のしくじりを知った。
「何、作ってんだ」
会話の糸口を探す。声が聞きたかった。
「明日の朝飯。パンのフィリング。詰め物、な。パン生地はそろそろ発酵が終わるから、そしたら包んで、もう一度発酵させる」
料理の事となれば、サンジは饒舌になる。
「当分終わんねえのか」
「包んじまえば、今日はおしまい。焼くのは朝。パンは焼きたてが一番美味い」
「寝る時間はあるのか」
夜もだいぶ更けている。パンを焼き上げるには早起きしなければならないのではないか。
「大丈夫だよ」
サンジは膨らんだパン生地に拳を入れた。小分けし、手際よく詰め物を入れて丸めていく。
「随分ちっせえな」
「焼いたら膨れるんだ」
「へえ」
「食った事あるだろ」
「いつも食ってるあれか」
純粋な驚き方をしてしまい、ゾロは少し照れた。サンジは少し笑った。
口元を手で覆い、何かを、おそらくいつも出される詰め物の入ったパンの大きさと焼かれる前のそれの大きさについて、考えているゾロをよそに、サンジは膨らむ前のパンを並べた天板に布巾をかけ、コンロ上の寸銅鍋をかき混ぜた。口に咥えた煙草をコンロに近づけて火を移すと、ボウルを洗い、もう一度寸胴鍋をかき混ぜてからコンロの火を落とし、キッチンの灯りも落とした。
すると、暗くなったダイニングには、サンジの煙草の先が赤く光るだけとなる。それがふよふよと動きながら移動するのを、ゾロは目で追った。
「寝ねえの?」
ダイニングの扉を開き、サンジは言う。うっすらとした星明りで柔く逆光になったその表情は、やはり判らない。
「寝る」
止まり木から立ち上がり、ゾロも扉に向かう。
「誰と?」
にやけた声に、お前と、と答える代わり、ゾロはサンジの煙草を口から引き抜いた。
口付けの距離で、言う。ここまで近づけば、互いの表情も良く判る。
「お前の声が聞きたい」
20181109,1110
*ゾロ、お誕生日おめでとう!いっぱいサンジの声聞いてね!(原作でも早く聞けると良いね!)
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