『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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この朽ちた建物は、以前は教会だったのだろう。壁だったと思わしきステンドグラスの残骸に向かって、ベンチの残骸が二列で数台ずつ並んでいる。中央の通路は充分広く、かつてはここを通った花嫁もあったろう。隅に設えられた小部屋は両端に扉があり、中央で仕切られている。懺悔室だ。どんな秘密が仕切りを挟んだ二人の間で共有されたのか。
一方の扉は開いていて、隙間からだらしなく伸ばされた足先が見える。見慣れたブーツだ。閉じていた方の扉を開けてその狭いスペースにくぐり入ると、仕切りの向こうで男が目を覚ました気配がした。ちんまりとした椅子に腰を掛け、アクションを起こされる前に、と先制する。
「まあ聞けよ」
椅子が軋む音がした。律儀にも、聞く姿勢を取ってくれたらしい。こちらは迷える子羊の為のスペース。座り直して仕切りから張り出した台に肘をつけ、組んだ手に額をつける。
屋根と壁は既に用を成していないのに、崩れ方が半端な所為で空気は停滞するばかりだ。湿度と気温の高い夜、遠く瞬く星まで茹だって見える。じっとりと背中に浮かんだ汗が、背筋を転がっていった。
今こうして生きているのだっておまけみたいなもんだ。俺はとっくに死んだものになってるし、何度も死にかけて、実際、死んだっていいと思った。死んじまいたいと思ったことだって、ある。
なのに意地汚く生きちまって。
どうしてこんなにさみしい心持ちがするのか、考えながら言葉を探せば、出てきたのはそんな事だった。
必要な時が来たら、なのに俺がぐずぐず生きてたら、お前が、殺して。
即席の神父は黙って秘密の共有を受け入れている。
怯んだり、同情したり、しないだろうから安心して子羊の真似事も出来る。
現役時代は酷い圧迫感をもたらしただろう小部屋の天井もほとんど失われている。それよりだいぶ高いところにあった筈の屋根だって同様だ。頭上には星空が広がっている。開放感が心許無く、煙草に火をつけた。立ち上った煙を追って視線を上へ遣ると、湿度の高い熱気で歪んでいた星が、一斉に降ってきた。このままあれらがここまで落ちたら、ここはいよいよ瓦礫になる。俺も、こいつも。そう思えば自然と口が開いた。
もうひとつ。
秘密を抱えてる。抱えちゃならねェ感情だよ。劣情を伴う恋心だ。お前、わかる?
俺は一番になれねェし、なりたくもねェけど、それが時偶、無性に、さみしい。
こいつは間違った感情で、あいつには、間違わせたくねェんだけど、な。
顔突き合わせちゃァ喧嘩になる仲間だよ、海に撒いて捨てるには、ちと大きくなり過ぎちまった。
洗いざらいぶちまけた。
「それでお前は、どうしたい」
神父よろしく、男は厳かに言った。聞き慣れた声の聞き慣れない声色に、我に返る。思わず天を仰ぐと、星はもう、降るのを止めていた。元通り、熱気で淀んだ夜空が見えるばかりだ。
「お前の耳を、食っちまいてえ」
俺の秘密を洗いざらい集音したお前の耳を。
「食いに来いよ」
向こうの扉が軋んだ音を立て大きく開かれる。
「お望み通り殺してやる」
耳を食う前に、どんな顔をしているか知れてしまう。知られるのも知るのも、遠慮したい。躊躇していると、こちらの扉も軋んで開いた。
「お前だけと思うな」
言われた意味を理解する前に、手が伸びた。同時に伸ばされた手に煙草を奪われる。肘を置いていた辺りで躙り消したのを投げ捨てた手を引いた。狭い小部屋に縺れて倒れ込む。椅子はあっさりと転がりばらけた。視線の先遠く、星はますます滲んで歪む。
目の前の耳に、噛り付いた。
「俺はお前に、殺されるんだろうな」
神父面を止めて久しく、ぽつりと言葉が落ちた。まるで迷える子羊だ。
「お前も俺に殺されてェの」
問えば、
「間違うなら、お前と間違いてェ」
ぼそりと言って、言葉を忘れた俺に畳み掛ける。
「わかるよ。俺も、同じだ」
再びの、懺悔。
「お前だけと思うな」
秘密の共有をして、神父と子羊は綯交ぜになる。既に二人を隔てる仕切りは無い。
20170207,0208
utaeさんはじっとりと汗ばむ熱帯夜、教会跡地できみの耳を食べてしまいたいとおもった話をしてください。
#さみしいなにかをかく
https://shindanmaker.com/595943
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