二次創作『ちいさな死』数年後 2017/01/07__00:00

＊やがわさんの12月26日付『ちいさな死』に激しく萌えてしまい、うっかり二次創作してしまいました。掲載許可頂いたので、皆様のイメージを壊さないといいなあと思いつつ、先行公開させていただきますー。先方でも近いうちにアレしてくださるそうで、嬉しい限り。まずはこちらをご堪能なさってくださいねー素敵だから！

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　引っかかったのだか引っかけたのだか、どっちでも同じ事だがまあとにかく、その状態で何年か過ぎた。出会った頃は紅顔の高校生だったのが大学卒業間際に俺の部屋に転がり込み、社会人になった今も住み着いているゾロはまだ若さの只中にいる。俺はその分歳をとった。当初から歴然としていた年の差は幾分か和らいだけれど、それでも燦然と二人の間に横たわっている。溌剌としたフレッシュマンと、草臥れた洋食屋のオヤジ。まあ俺の方はダンディなナイスミドルと言い換えてくれてもいいが、はたから見たら、ちょっと意味の分からない組み合わせだろう。親子にしては似ていない。それはともかく。
　ゾロの荷物は当初衣装ケース一つ分しかなかったが、生活の変化に伴い諸々増えた。元々一人暮らしのスペースに二人で居るのだ、荷物は適宜整理しないと当然手狭になる。押入れの整理をしている最中、ゾロが担いで来た衣装ケースをひっくり返してしまった。何が入っているのかは知らないが、それしか持って来なかった荷物を俺が勝手にいじるのも捨てさせるのも気が引けてそのままになっていたものだ。
「あーあー」
　特に物に固執するタチでもないのか、ぶちまけた荷物はまばらだ。壊れるようなもんは入ってねえだろうな、変な音はしなかったけど。
「何遊んでんだ」
　風呂掃除をしていたゾロが顔を出し怒るでもなく呆れた声で言った。
「ひっかけて落っことしちまった。悪ィな」
「別に、いいけど」
　心底どうでもよさそうに言ったゾロの視線が一点で止まった。
「あ、」
　つられて見れば、そこには変な柄のトランクス。つまみあげてみればゴムがべろべろだ。ところどころ薄くなった生地は色褪せて、更に謎の柄になっている。
「なんでこんなの……捨てそびれたのか？」
「や、」
　ゾロが珍しく口ごもる。
「なに」
「いや、その、初めてん時の、で、だから、」
「初めて？」
「ここ泊まって、で、」
「あー、そういえば」
　あの頃ゾロの下着は、こんな感じのトランクスだった。
「え、お前それで、大事に持ってんの」
　厳選して持ち込んだ、数少ない荷物の一つとして。大事な思い出の一つとして？……可愛いとこあんじゃん。
「う、」
　まずいものを見られた、とばかり下唇を突き出してほんのり顔を赤くしたゾロが、俺の手からトランクスをひったくった。ぐちゃりと丸めて尻ポケットに突っ込み、風呂場へと戻っていく。ゴシゴシと殊更大きな音を立ててタイルを擦っている。捨てねえんだ？……可愛いとこ、ある。
　初めてちいさな死を与えあったあの日、俺がいなくなったら不幸になる、と宣った男。まだまだ全然、可愛い男。俺を殺せる、たった一人。
「不幸にするわけにゃ、いかねえよな……」
　ちいさな死は、もう数え切れないほど超えた。あといくつ——　……いや、何度でも。数え切れないほどに。

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20161230,20170103,0105

「変な柄のトランクス」がたまらんかったです。

　という思いを感想文に落とし込めずに、あの二人の数年後、こんなことがあるかも知れないなあ、と思っていたら1000文字を超える小話になってしまいました。
　勝手に続きを書いて送りつけるなんて、ひょっとしてやがわさんの頭の中にあるかも知れない続編の邪魔になってしまう？そしたら書かれたかも知れない続編を読めなくなってしまう？それはとんでもない損失だ！うう、どうしよう……そうだ！これは二次創作！続編ではなくて、あるかも知れないしないかも知れないIFの世界！……ということでご容赦いただければ。（ついでにタイトルの思いつかなさもご容赦ください！）

　やがわさん、素敵なお話と早速の嬉しいお返事、ありがとうございました！