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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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*本来は、ジャムを紅茶に混ぜるのではなく、ジャムを舐めながら紅茶を飲むのらしいですが(今知った)

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 小鍋に湯がぼこぼこと沸いている。
 さっきまでは大騒ぎの食卓だった。大漁祝いで豪勢だった夕食にはしゃぎ疲れたか、クルーは早々にダイニングを後にした。片付けをすっかり終えたサンジが火に掛けた鍋の立てる音が、やけに大きく響く。
 サンジはぞんざいな手つきで茶葉を入れた小さい金網をマグカップに落とし、その上からまだ踊っている湯を落とした。大量の湯気と金網がふらふらと浮く。
 冷蔵庫から赤いジャムの瓶を取り出し、小鍋を拭き上げて仕舞い、スプーンを取り出し、金網をマグから引き出して二振り、最後の滴までマグに落とすとシンクに放り込み、小ぶりなスプーンに一杯分のジャムを掬ってスプーンごとマグに突っ込みぐるぐると回す。その動作は決まりきった様に淀みなく流れる。サンジはふう、と一吹きしてから、マグに口をつけ、ちびりちびりと少しずつ口に含み飲み下していく。

 ナミに入れてやっている時は、もっと丁寧だ。ブルックと飲む時も、もう少し。サンジは自分だけの事になると、途端にぞんざいだ。
 思った通りに、そのまま指摘した。
「紅茶なんてのは結局、湯がぐらぐらしてりゃ良いんだ」
 そう言って珍しくも柔らかく笑ったサンジを、また見たい、と思って以来、何度かサンジが一人紅茶を淹れる際にそれを眺めている。そうし始めた頃は「お前も飲むか?」と律儀に訊いてきたサンジも、その度断るので今は、特に何も言わずに一人分の用意しかしない。それを特に何も言わずに、一人眺めている。
 ただ今は、いつもより静かな船内が心許なかったのかも知れない。なんとなく、声を出した。
「美味いのか?」
 それ、と顎で示すと、サンジは湯気で重くなった睫毛を持ち上げて視線を寄越した。
「飲むか?」
「いや」
 紅い茶に赤い酸味が溶けてやや黄みを帯びた熱の塊。サンジの唇を濡らすそれは、飲みたいというより、むしろ。
「ちこっと、舐めてえ」
「ケチな事言ってねえで、飲んだら?」
 見たかった柔らかな笑顔で、サンジは飲みさしのマグを差し出す。湯気のほこほこと立つそれを、揺れないように手首を掴む。

「舐める方が、美味そうだっつってんだよ」
 肝心なところが鈍感なサンジに、分かる様に言い含める。きっと、射る様に強く差し向けた視線が正しく伝えるだろう。マグの中身より熱いくらいの視線だ。それと、触れた先からじわじわと上がる体温を、サンジの手首は正しく理解する筈だ。
「どこ、舐めんの」
 理解した証に、サンジの視線は揺れた。
 視線を浴びる、紅茶でほんのりと濡れた唇の端が、先ずはちろりと出されたサンジの舌先で濡らし直された。
 それから。

 ジャムを落とした紅茶が美味いのかどうかはまだ知らないままだ。


20160426,0501,0617,0709

*ナミさんとブルックに差をつけるべきだった。と思い、『もう少し丁寧だ』を『もっと丁寧だ』に変更しました。自分の為だけに淹れるのでなければ、ポットを使う。それがぞんざいと丁寧の差(に見えるゾロ)20160710 08:15
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