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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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*血なまぐさいです(すみません)

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 これは罠に嵌ったのかも知れない。
 ゾロがそう思ったのは『格安で飲み放題』と客引きをする声を耳にして入った酒場で、客がさりげなさを装ってどんどんと帰って行き、剣呑な目をした屈強な、いかにも腕に覚えアリな男が数人を残すのみとなった頃だった。気弱そうなボーイはゾロにグラスを運ぶ度に怯えを隠さずその顔から血の気を引かせていたし、シェイカーを振るバーテンは離れたテーブル席からでも目を光らせるゾロの注文に妙なものこそ入れなかったが、通常よりアルコール濃度を高くする”サービス”を怠らなかったように思う。ボーイとバーテンが目配せをして店内から消えたのを合図に、残った剣呑な目が一斉にゾロを射た。
 店内の調度品はこれといった品もなく、ありきたりな安物と分かるそれで、格安飲み放題も頷ける。そんなものは評価の埒外であるゾロにとって、酒と漂う音楽の質は悪くないように思えるその店は、当たりと言って良かった。なのにこの歓待は残念だ。三刀流の元海賊狩りが酒を好む事はすっかり有名なようだが、彼のアルコール耐性についてはそこまで知れ渡っていないらしい。酒場一つ程度のアルコールで酔い潰せると思われたのも心外だ。酔いより先に膀胱の限界が先だろ、俺を潰したいなら酒蔵一つ二つは覚悟してもらわねえと。
 向けられた銃口の数を数えながら、ゾロは外していた刀に手を遣った。
 ぱん。
 乾いた一発の銃声を皮切りに四方から弾丸が飛んで来る。薙いだ刀が軌道を変え、そのうちの幾つかが照明を潰していく。薄暗かった店内はなお暗くなり、ばたばたと慌てる音の合間から聞こえた撃鉄を起こす音に狙いを定めて斬りつければ、勢いで放たれた弾丸が最後の照明を消した。
 さすがに暗闇の中、同士討ちを避けてか銃声は途切れた。ゾロは殺気立った気配を頼りに一人ずつ始末していく。無駄な殺生は好まないが、穏便に逃げ出すには灯りと情報が足りない。初めての店の構造は、ゾロには複雑怪奇だった。壁伝いに出口まで行こうにも、己の放った斬撃が店内装飾を瓦礫にしており、行く手を阻む。どうせ敵意にぶち当たるなら、余計な手間がかかる前にそれを排除するに限る。そして、酒と音楽で良い気分を楽しんでいたゾロはその時間を潰され、少々気が立っていたのだった。
 しっとりと情感を歌い上げる女の、ねっとりとした声がぷつぷつと途切れ、歪み、やがて途絶えた。鉄棒か何かを盲滅法に振り回しているのだろう、がこがこと何かが破壊されゆく音が断続的に耳に届く。唯一価値がありそうだったレコードとプレイヤーもただのゴミになってしまった。土産に持ち帰ってやれば、誰かを喜ばせもできただろうに。もったいねえ。ゾロは途切れた女声を少し惜しく思った。
「オラァ!どこだァ!」
 いい加減諦めれば良いのに。ゾロは溜息を吐きかけて思い直し、間合いを図る。
「居るのは分かってんだァ!」
 リーダー格と思わしき男は暗闇をどうにも出来ず、背後からの急襲を恐れている。大声と暴力で威嚇しようとするのは、その表れだろう。潜んでいる敵の気配も探れないようでは、さっさと撤退するのが身の為だ。恐れている事が現実になる。即ち——
 ゾロは行き過ぎた威嚇者の背後を取り、腰と脇の中間に刃を突き立てた。う、と呻く声が短く聞こえ、握力の抜けた手から落ちた鉄棒がからんと音を立てる。からんから、と軽く踊った音を止めたのは、その上にどさりと倒れ込んだ死体だろう。切っ先を軽く飛ばし、血を払う。
 残る気配は、薙ぎ倒されたテーブルと椅子の隙間で、ぶるぶると震えているのが一つ。灯りが消える前までの勇ましさは疾うに消えている。無視して構わないだろう、あの分では指先など硬直して引鉄も引けまい。ゾロは油断していた。窮鼠は猫を噛む、と教えてくれたのは師匠だった。師匠の教えに無駄はない。知っていて活用出来なかったのは、完全にゾロの落ち度だ。
 ぱん。
 暗闇と震える指で狙いなど定めようもないだろうに、その弾はまっすぐとゾロの脚を射た。奇跡の一撃は鋼のようなゾロの筋肉の、狭間の柔らかな腱を損傷し、その動きを止めた。急激な失血は、その意識すら奪う。もはやゾロの暗闇は、照明の損失に由来しなかった。遠くなる音の間に、近寄る気配を感じる。とどめでも刺しに来ただろうか。銃弾の手応えに自信を取り戻したか、さっきまでの怯えた気配をすっかり強気に戻している。
「いいご身分だなァ?」
 聞きなれた声に、ゾロは思わず舌打ちを零した。
「なかなか帰って来やがらねェと思やァ、酒場で酔っ払って大の字かよ」
 慣れた手つきでゾロの手拭いを引き抜き、腱の上に巻きつけ止血する仕草からうっすらと煙草が香る。こんなに暗いのに、見えているのだろうか。
「おら、帰ンぞ」
 為す術なく背負われ、足癖の悪いコックが店内の瓦礫をぞんざいに蹴り飛ばして歩くのを呪う。硝煙の代わりに夜の風が鼻を擽り、ゾロは目を開けた。まだ、暗い。

「くだらねェ怪我しやがって…クソ」
 自分より重い体、とりわけ意識のないそれを背負うのは、如何にサンジとて楽ではない。重力に従って落ちようとするゾロを、背負い直す。
 まだ温かい血液が、ゾロの脚を掛けたサンジの腕を濡らしていく。その分、背負う体が軽くなるようで、サンジは船医の元に急いだ。探し出してから未だゾロの声を聞いていない。返事が返らないのが嫌で、声を出すのは躊躇われた。耳元に掛る呼吸だけがサンジの足を進ませた。
 クソマリモが死んだところでどうともない。ただ俺は、俺、は。……どうせなら俺が殺すか俺の為に死ぬか、何か、俺の。
「クソ」
 目が覚めたらありったけの罵詈雑言を浴びせてやるから、覚悟しとけ。ちゃんと目ェ覚ませよ、クソマリモ。


20160227,0228,0321,0322

*むやみやたらと殺しかけてしまって、申し訳ない気分(でも書く)(その上オチが迷子で重ね重ね)(でも出しちゃう)
 類い稀な生命力と的確な治療により、翌々日あたりにはぴんぴんしてると思います。
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