忍者ブログ
『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

*軍パロ
 …軍?って感じの、つまりその必要性は一ミリもない何かの一場面

拍手




 *****
      



 マホガニーの重厚な扉をノックする。
「サンジ補佐官、着任致しました」
「入れ」
 昇進したてにしては落ち着いた声だ。サンジは脱帽し、入室する。己に与えられた任務は吐き気を催すものだったが、生憎サンジに拒否権は無い。執務机の前まで進み、サンジは敬礼した。
「サンジ補佐官です。本日より宜しくお願いします」
「宜しく頼む。ロロノアだ」
 一瞬こちらに目を遣っただけの挨拶で、今からサンジが仕える上官は書類に意識を向けたままだ。握手を求めるでもなければ何の指示を出すでもないその態度は、サンジの苛立ちを煽った。この分なら吐き気も忘れて任務に取りかかれるだろう。こいつの鼻を明かしてやりてえ。サンジは怒りでヒートアップするクチだった。
 先手必勝、とカラーを緩めながら執務机を回り込んだサンジは軍帽をふわりと机に投げた。ぽすんと無事着地した音を合図に、執務椅子に座る上官を椅子ごと机から引き出し自分と対面させる。高級な椅子は当然キャスターも上等で、毛足の長い上質な絨毯の上で軋み一つあげない。同じ様にその主は、驚きの声をあげるどころか表情一つ動かさなかった。可愛げの無い男だ。頬を染めろとまでは言わない、困惑か、せめて嫌悪くらいは見せたって良いだろうに。サンジはその所感を表情には出さずに、上官の膝の上に跨がった。
「なんのつもりだ」
 サンジが尻を落ち着けるのをすっかり待ってから、上官は至近で冷徹な声を出した。
「上官はこういうのがお好きだと思って?」
 先程の挨拶とはまるきり違えた声色でサンジは戯ける。
「色仕掛けのつもりか」
「まあね」
 微動だにしない上官の、肘掛けに置かれた腕の手首から肩に掛けてを中指で辿る。上物なサージはその感触を大して伝えはしないだろう、しかし辿られているという事実を認識させる事が重要だ。サンジは瞼と首筋を多く見せつける様にゆるりと体を動かし、徐々に唇を開いていく。その様をじっと見ていた上官は、初めて表情らしきものを見せた。
「トラップにするには、少々足りないな」
 言うなり手首を掴まれたサンジはその手を引かれ、勢い上官の胸板に倒れ込んだ。細く見えてその実それなりの体格であるサンジを受け止めてびくともしない体躯は、異例の出世が異様な戦績に困惑した上層部の苦肉の策だとの噂を裏打ちする。曰く、軍規を無視したスタンドプレイ、但し狙った首は余さず狩る鬼神。一兵卒としては不適格だが、手放すには惜しいハンター。敵陣に寝返られでもしたらとんでもない事だ、ならばいっそ分不相応な階級で飼殺せ。
 サンジの鼻先を上官の体臭が掠める。硝煙と鉄錆に似た、サンジにも纏わり付いている匂い。
 だらしなく緩まっていたサンジの喉元に、上官の顔が埋まる。硬い鼻先が首を掠め、熱い吐息が、舌が。嗅がれ舐められた、とサンジが知覚した瞬間、ちりと痛んだ。噛まれている。痛みは暫し続き、唇が強く押し付けられ吸い上げられる。鬱血痕を残したいタイプか。嫉妬深いか存外甘えん坊か。じゅうと吸い上げる音が一際高く響き、喉元の熱は離れた。
「この程度の色気じゃ、ぴくりともしねえよ」
 確かに顔色一つ変わった様にも見えないが。サンジは喉元のおそらく痕になっている部分を人差指で撫でた。
「痕なんてつけちゃうくせに?」
「痕でもつけりゃあ、ちったあ色気も増すんじゃねえかと思ったんだが」
 上官はサンジの人差指の軌道に目を遣った後、とんとサンジの肩を押し膝から退ける。
「期待外れだな」
 サンジが跨がっていた辺りを軽く払い、執務机に椅子ごと体を納めた。
 軽い力で退けられたサンジは後方へ軽くステップを踏み、上官が書類に目を遣る横顔を眺める。あの鼻先が、唇が、触れた。喉元に残る水分を指先で拭い、見る。透明な唾液がいっそ清冽に光るばかりだ。上官の犬歯はサンジの血管までは届かなかったらしい。そりゃそうか、吸血鬼でもあるまいし。しかし薄皮の一枚は刮げられたようだ。擦り付けた唾液が、沁みた。
 上官はそれきりサンジに関心を払わない。手持ち無沙汰で、サンジは執務机に背を向けるソファの真ん中に座り堂々と脚を組んだ。
「あんた男色家だって噂だぜ」
 書類を捲る音が止む。
「仮にも上官に向かって叩く口かよ」
 その口調も、最早上官のそれではない。
「気にしねえだろ?」
「まあな」
 再び書類を捲る音がした。
「強ち噂でもないって訳だ?」
「何が」
「期待、したんだろ?ちっとは。俺の色気が増すのを。残念だったな、宛てがわれた補佐官が好みじゃねえので。どんなのが好みよ?上に掛け合えば直ぐに取っ替えてもらえんじゃねえの。俺もラッキーっちゃラッキーだな、自分からは断れなくても、相手が拒絶するんじゃしょうがねえ」
 サンジはぺらぺらと喋った。どうせ二度と会う事は無い。おそらく、自分に待つ未来は除隊で済めば御の字、下手したら命の保証が無い。どうとでも切り抜けるつもりではあるが、そうなったらそうで、構わない。
「男色家な訳じゃねえし、好みじゃねえ訳でもねえ」
 背を向けたままだから、サンジに上官の表情は分からない。けれど声音が柔んだ。
「てめえを取っ替えるつもりはねえよ」
 上官からもまた、サンジの表情は見えない。サンジは声音を変えないように注意深く発声した。
「なんでまた」
「ただ上のジジイ共の計略に乗ってやるのも、業腹だろ」
 ふわり、と飛んだサンジの軍帽がぽすん、とサンジの頭に乗る。近距離とはいえ、コントロールの良い事で。サンジは傾いでいた軍帽を正しく整えながら、上官の言った意味を考えた。上官は、サンジの事が好みじゃない、訳ではない、非男色家。サンジを補佐官に据え置くつもり。…意味が分からない。
 サンジが意味を捉えかねていると、とんとんと書類を揃えながら上官が言った。
「お前どんなヘマして人身御供にされたんだ」
「あ?」
「飼殺しの餌にされたんだろ」
 餌だろう、と認識した者に対してこの質問。喰えない。しかしサンジに餌に甘んじるつもりはもう無かった。
「ああ、飼殺しにされてる自覚はあんだな」
「俺に、剣の代わりにペンを持たせてどうしろってんだ」
 羽根ペンを爪弾いたのだろう、ぶんと羽根が回る軽い音がした。
「ペンは剣より強し、だぜ?」
「そりゃ意味が違うだろ」
 冗談だと分かっていて鹿爪らしく返す。全く、喰えない。
「で? 大人しく飼殺されてるつもりかよ?」
「時機を待つ。それまでお前も、大人しく餌のフリしてろ。そしたら、ここから、連れ出してやる」
「偉そうに」
「俺はてめえの上官だ、偉いんだよ」
「ふん」
 サンジが鼻から出した息は、心持ち嬉し気になった。上官の耳にもそれは届いたのだろう、笑んだ雰囲気で告げられる。
「なにせ『好みじゃねえ訳でもねえ』からな」
 飼殺しに可愛げを見出だして、その餌で居るのも悪くないと思い始めたサンジも笑う。今振り返れば、ひょっとして、頬の一つも染まっているのが見れるかも知れない。
「ちゃあんと『好みだ』って言えたら、着いて行ってやっても良いぜ?」
 上官は鼻で、しかし嬉しそうに笑った。
「そのうちな」


20151214,1215,1222,1223,1224
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
mail
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
[901] [900] [899] [898] [896] [897] [893] [895] [894] [892] [891]
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
アーカイブ
ブログ内検索
最新記事
最新コメント
[04/16 koma@ツツジの花]
[02/23 タカス]
[04/18 koma]
[12/22 koma]
[12/12 ゆう]
プロフィール
HN:
utae
性別:
女性
手書きブログ
忍者カウンター
忍者アナライズ
バーコード
P R
忍者ブログ / [PR]
/ テンプレート提供 Z.Zone