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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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*現代パラレル 初回:12/18付

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 ちょっと、と煙草を買いに出た筈が、随分帰りが遅いとゾロが気づいたのは、二本目の缶が空いた頃だった。愛飲の銘柄が売り切れで、別の店へ足を伸ばしたのだろうと思った。煙草なんてどれでも一緒だろうと言えば、ばかやろ全然違う、と蹴られた記憶が脳裏を掠めたから。ゾロは口煩いのが居ないうちに、と三本目のビールを冷蔵庫から出して干した。その後はどうしたのだったか。横になってそのまま寝てしまったのだろう、朝日に目を覚ませば、点けっ放しのテレビに照明、出しっ放しの皿に缶。サンジがそんな事を許すなんて珍しい、蹴り起こされて片付けさせられる筈だ。よもや具合でも悪いのか、と寝室を覗けばそこはもぬけの殻だった。シーツは冷えきっており、人の寝た痕跡も無い。戻って来なかったのか、と首を捻るも、出勤時間の迫っていたゾロは空き缶と食器を濯ぎ家を出た。

 仕事を終え帰宅すると、人の気配のしない部屋はゾロが朝出た時と寸分違わなかった。携帯電話に着信は無い。サンジのスケジュールを思い出す。今週はずっと遅番、と言っていた。ならばまだ店か。
 ゾロは冷蔵庫から缶ビールを出して呷った。冷蔵庫の中身は珍しく酒ばかりだ。確か昨日もそうだった。一昨日はどうだったか。思い出せない。ストッカーから乾きものを取り出してもそもそと咀嚼する。缶ビールをもう一本。サンジの勤める店が終わり常なら帰宅している頃合いになっても、サンジは帰って来なかった。電話の一つも無い。翌朝、ゾロは前日に戻ったかと思うような目覚めを経験した。
 その日の仕事終わりに、ゾロはサンジの勤め先を訪ねた。ゾロに覚えは無いが、知らないうちにサンジを怒らせたのかも知れない。ならば迎えに行くのが上策だ。

「いらっしゃいませ…あ、ゾロさん。久し振りですね。お元気でした?」
 オーダーストップ直前の店内に入れば、サンジの同僚が懐かしげに笑顔を見せる。サンジと付き合うようになるまで足繁く通ったこの店も、家に帰れば顔をあわせるどころか手料理まで振る舞われるようになれば通う理由が無く、またサンジがやりづらそうにするので足は遠のいていた。そもそもサンジとどうにかなりたくて通った店だった。あの頃居た店員には、サンジに横恋慕する困った客として認識されていただろう。それが粘り勝ちした様を知られているゾロとしても、気恥ずかしい。
「あいつ、居るか?」
 きまり悪く問い掛ければ、店員は目を丸くした。
「あいつ?サンジさんの事です?」
「ああ」
 店員の顔が困惑に歪む。
「知らなかったんですか?」
 ゾロが店員の様子に首を捻っていると、奥から店長が顔を出した。
「サンジは先週で辞めたよ」
「は?」
「あんた、一緒に暮らしてるんじゃないの?」
「ええ、そうです、けど」
 店長と店員、ゾロが困惑の表情で見詰め合う。
「なんか食ってくか?ちょっと待ってくれりゃ、話出来るけど」
 店長の提案にゾロは頷き、店長と店員は仕事に戻った。程なくしてゾロの前に出された賄いのようなプレートがどんな味なのか、ゾロには一つも分からなかった。

 オーダーを片付けて厨房から出てきた店長によれば、サンジの口から退職の意を告げられたのは、ひと月程前の事だったという。人員の募集をかけ、新しく雇い入れたコックが物になりそうだということで、先週末での退職となった。次の店は決まっているのか、と問えば、曖昧に言葉を濁されたという。どちらかと言えば口の悪いサンジがはっきりしない物言いをするのは珍しく、これは競合店に引き抜かれたか、さもなくば店を構えるつもりかも知れない、と思ったとの由。

「喧嘩したんなら、ちょっと折れてやってくれよ。あいつ意地っ張りだから、悪いと思っても自分からは謝れないだろ」
 ゾロより長くサンジと付き合いのある店長からのアドバイスに、全くその通りだと思いながらも曖昧に頷いて閉店した店を出る。部屋はやはり今朝と何一つ変わっておらず、ゾロに分かったのは、サンジは事故や事件に巻き込まれて帰って来れないのではなく、計画的に居なくなったのだという事だった。その理由だけが分からない。すっかり冷えた部屋で、ゾロは一人頭を抱えた。

 サンジの携帯電話を鳴らす。返るのは『この電話は現在使われておりません』という無機質な音声。予想通りでいっそ笑える。定位置に仕舞ったままの通帳を捲ってみれば、預金残高は三桁。ここ一ヶ月で数回に分けて十万ずつ引き出している。きっと引き出したその足で、どこぞへ作った新しい口座に入金しに行った筈だ。サンジは多額の現金を長時間持つのを嫌がった。小心な所があったから。それを指摘した時も蹴られたのだったとゾロは思い出す。

 何もかもが計画的だ。サンジは計画的にゾロの前から姿を消した。
「せめて書き置きくらい残してけよ、心配すんだろ」
 聞く者の居ない文句を吐いたゾロは、それに傷付く自身を自覚して、壁に頭を打ち付けた。目尻がほんのり濡れたのは、ただ痛みに驚いただけの生理現象だ、と。


20151212,1214,1216,1217,1218

*この続きもサンジと同様失踪しております…(見つかりますように)
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