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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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*ゾロサンじゃないサナゾ。サ→ナ→ゾって感じですのでご注意ください。ゾロは出ません。

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 ナミの視線の先に居るのが誰かをサンジが知っているのは、サンジの視線の先にナミが居るからだ。
 サンジは知っていてなお、ナミに惜しみなく愛を捧げる。ナミはそうされるに値するレディだとサンジは思っているし、ならばそうするのがサンジの性分だからだ。ナミの視線の先に居る男が、サンジの対抗心を煽る男だからではない、決して。
 サンジの捧げる愛はナミに対して無条件であり、奪う類いのものではない。だからナミは安心して、サンジと際どい恋の話も出来るのだ。サンジなら言ってくれる。「そんな悪女なナミさんも素敵だ」と。サンジはそれを楽しんでくれているとナミは思うし、ナミにもそれは楽しい。
 結局の所、サンジが自分に向ける視線は、情欲とか劣情とか、そういった類いのものを含まないのかも知れない、とナミは思う。
 ナミにとってサンジとの会話は心地良いものだった。だから少し、踏み外した。少しだけ、間違えたのだ。

「ねえ、あいつが駄目だったからあなた、なんて、許されると思う?」
「それでもナミさんが俺を選んでくれるなら、って言って欲しいの?」
「質問に質問で返すのはマナー違反だわ」
「そもそも最初の質問がマナー違反だろ?」
 ナミは、あれ?と思った。サンジ君じゃないみたい。
「怒ってるの?」
「どうして?」
「そんな風に見えるわ」
「ど う し て?」
 殊更ゆっくり発声したサンジに、ナミは深く溜息を吐いた。
 これは私の知ってるサンジ君じゃない。
 私の知ってるサンジ君は、私の何をも許す。甘く甘く、それが私を駄目にする事だと知っていてさえ。
 冷たい程に冴えた青い瞳は、全てを受け入れるいつものそれとは全く違う。
 あいつどころか、サンジ君の方が駄目じゃないの。そうだ、この人は意外と頑固だ。安全牌になど、ならない人だ。油断していた。
 怒らせただろうか。もうあの優しさは私に向けられる事無く他の誰かに与えられるのだろうか。
 それは惜しいな、とナミは思った。でも、それも仕方の無い事、と。

 サンジはナミのカップに紅茶を注いだ。鮮やかな紅色の雫、最後の一滴が生んだ波紋が凪いだ時、サンジの瞳はナミの知るそれに戻った。
「あいつが駄目だったら、なんて前提自体、間違ってるんだから」
 けれどにっこりと笑うその顔は、ナミの知るそれとはほんの少し、違って見える。
「俺に回るお鉢は無いなァ?」
 残念だけどね、と戯けてみせるその仕草は、いつもと同じ様でやはり違う。
 ナミは鼻の奥が痛むのを感じて、まだ熱い紅茶を口に含む。立ち上る湯気は赤くなりかけた鼻頭と潤みかけた瞳をごまかしてくれるだろうか。

 あいつとサンジ君との間に、どれだけの違いがあるというのだろう。あいつが駄目だったからあなた、が成り立ってしまうのに、どうしてサンジ君じゃなくてあいつなの。
「それが恋ってものでしょう?」
 サンジは軽やかに笑う。
 ああ、あなたは私じゃなくていいのね。
 それを口にするのは流石にマナー違反。
 あなたが甘やかしてくれる範囲、私をもう少し甘えさせていて。私は、退路を断つから。あいつが駄目だったら。そんな仮定は捨てるから。

「サンジ君、好きよ?」
「俺の方が好きだよ?」
 心地良い疑問符の応酬で、あなたは私に前を向かせる。
 これは恋ってものじゃないとしたって、間違いなく大切な存在だ。


20140924,0930,1001
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