弱い俺でも 2014/09/30__00:00

＊弱りゾロ

---

　——弱い俺でも、好いてくれるか？

　何言ってんだお前、と軽い調子で言えれば良かったのに。
　俺はただ驚いてしまって、それはゾロの苦笑を誘った。
　それを見て少し落ち着いた俺は言った。
「俺は、強い雄に惹かれる雌じゃねェよ？」
　ゾロは瞳を揺らして言った。寄る辺なさに、こっちの方が泣きそうだ。
「弱音を、吐いても？」


　サンジは緩く視線を和らげ、口角を上げた唇をたわめた。
　——許容。

　目指す先は遠い。しかし辿り着かねばならない。たった一人で行くものだと思っていた、道連れの温かさを知った。その温もりを知らずにたった一人で目指す先とは別の遠くへ行ってしまった友、いつか再び一人で行くのかも知れない俺。この温もりを手放したくない、強くあらねば背中を預け合う事は叶わない。
　目指す先は変わらない。
　それでも、そこだけを見据えるのは、苦しい夜が、ある。


「それは弱さじゃねェよ、ゾロ」
　弱さだとしたって少なくとも、恥じる様なものでは。
　ゾロの弱さは、俺の弱さとは違う。でも、こんな時に必要なものはきっと同じだ。
「向き合って抱き締める為に、腕はこういう風に付いてんだ」
　胸を付けて背中に腕を回す。背中合わせじゃ、こうはいかない。だって、背中を預けるのは、他の大事な何かを守る為だ、大事な何かを掴む為だ。
　大事なものを抱き締める。
　大事なものに抱き締められる。
　それでまた、背中合わせで前を見据えられるなら、たまには向かい合って抱き締め合うのも、悪くない。
　お前となら。な？

　——弱いお前を、好いてても良いんだろ？

---

20140912,0929

＊男の子は（特に強さを売りにする男の子は）弱音なんて吐いたら嫌われてしまうかも、って恐怖と戦ってるんだろうなあ。頑張れ男の子。サンジ君の包容力に救われろ！