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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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*現代パラレル

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「マンモって何?マンモス?」
 サンジは隣のウソップに訊いた。
「さっきっから女の子しか入ってかないんだけど、マンモ室。」
 ウソップは隣のアホ面に、医大に通う彼女から仕入れた知識を、声を顰めて教えてやる。
「あれだろ、乳がん検診。乳房をぎゅーっと挟んでレントゲン撮るの。痛ェって話だぜ?」
 ちなみにウソップの彼女は客観的に判断しても美人で性格の良い深窓の令嬢であるが、それはサンジには秘密にしてある。考え得る反応は二つ、キレるか泣くか。どちらにしても厄介だ。両方だったりしたら目も当てられない。それはサンジを知る人間ならば誰もが同意する所なので、箝口令は快く受け入れられ守られている。
「えええ、じゃあ、あの扉の向こうじゃさっき入って行った女の子がおっぱい出して挟まれてんの?——お、出て来た。ああ可哀相にあの豊満なおっぱい挟まれちゃったのか心なしか痛そうな顔…っつーか技師はおっぱい見放題じゃねェの?」
 良く口の回るアホだ。悪い奴じゃないんだけどなー。
 ウソップは思いながら答える。
「仕事だろ」
 お前みたいにいちいち興奮してたら勤まらねェよ。
「あっちは女の子しか呼ばれねェな?」
「子宮がん健診だろ、男は用が無ェ」
「じゃ、じゃああの扉の向こうじゃ女の子が内診台に乗って股開いてんの?器具入れられてんの?先生あそこ見まくりじゃねェか!」
 マンモは知らないのに内診台だの諸々は知ってんのかよ、ああエロビか何かか。こいつホントそういうの好きだよなァ。大体ああいうのは医療従事者に対する冒涜だよなァまあ気持ちは分からなくもないけどタブー感はなかなかそそるっていうかイヤイヤ俺はそんなんじゃ興奮しないぜ俺はお前一筋だぜカヤ!
 ウソップは心の中で彼女に盛大に申し開きしながら気のない返事をした。
「だから仕事だって」

「ちったぁ黙れねェのか」
 待合室でウソップの、サンジとは反対側に座っていた男が低い声を出した。
「すんませんこいつ病気知らずなもんで病院が珍しいっつーか健診初めてでテンション上がっちまってて」
 ウソップが慌てて謝罪と言い訳をすると、ウソップの向こうからサンジが口を出した。余計な事を。
「てめェ、女の子が色々されてんだぜ、興奮すんだろ」
「しねェよアホか」
「なんだてめェホモか」
「あア?」
 男の額には立派な青筋が浮かんでいる。
「すんませんすんません黙らせますんでホントすんません!」
 ウソップはサンジを長椅子の、男とは反対側に押し出すと引き摺ってその場を離れた。サンジはムダに好戦的で困る。

 X線室から出て来た女の子を眺めてサンジが言う。
「バリウム飲んでぐるぐる回されて、この後下剤で苦しむんだぜ、あー救って差し上げたい!」
「お前いいから黙れよ、さっきの強面の兄ちゃんまた睨んでるから」
 ウソップは気が気じゃない。
「ロロノアゾロさーん」
 看護師が名前を呼んで件の男が席を立った。
 ウソップはほっと一息つき、頼むから諍いを起こしてくれるなと思った。健康診断に来たというのに刃傷沙汰など真っ平御免だ。勿論全員検査着で刃物など持っている訳も無いが、サンジならその蹴りで男一人沈めるくらい訳無いのだ。そしてロロノアゾロなる男もまた、その拳で難なく人殺しが出来そうな感じを醸し出している。病院だからすぐに治療を施してもらえるだろう、というのは気休めにならない。

 検査室から出て来たロロノアゾロがサンジが座る椅子の近くを通り過ぎた時、ぐー、とロロノアゾロの腹が鳴った。
 サンジはロロノアゾロを見上げて言う。
「腹へってんのか」
 ロロノアゾロはサンジを見下げて言う。
「へるだろ、夜、素うどん食ったっきりだ」
 サンジの眉毛がへにょんと下がった時。
「サンジさーん」
 美人の看護師が名前を呼んだ。
「はいはーい!」
 サンジは瞬時に目をハートマークにし、くるくると回転する勢いで検査室に吸い込まれて行った。
 ロロノアゾロはその様子をサンジが見えなくなるまで目で追い、暫し呆然とした後、鼻から息を短く強く吐いた。

 全て終わって、検査着から着替えようとサンジとウソップが更衣室に入ると、ロロノアゾロが検査着を脱いでいた。
 堂々と上半身を露わにしたロロノアゾロの筋骨隆々とした背中は傷一つ無く滑らかだったが、鏡に映って見えた胸には、隆々とした筋肉と共に袈裟懸けにばっさりと、物騒な傷が見える。
 視線に気付いたロロノアゾロがサンジを振り返るまで、サンジの視線はそれに釘付けだった。
「男の裸に興味があるのか」
 悠々と着替えを済ませたロロノアゾロが左耳にピアスを挿しながら言う。
「んな訳あるか!」
 サンジも思い切りよく着替えていく。刺さるような視線を感じた気がしたが、それはいつの間にか止み、ロロノアゾロは先に出て行った。

 茶でも飲むか、と病院の近くにあるコーヒーショップに寄った。
「外で飲もうぜ」
「お前煙草吸いたいだけだろ、やだね、お前一人で行け」
「分かったよ、付き合ってくんねェのな、薄情者」
「うっせー、さみーんだよ」
 ソファに身を沈めてカフェモカを啜るウソップを残し、サンジはラテを片手に外に出た。灰皿を手元に立ったまま煙草に火をつけると、端の席にロロノアゾロが座って居るのが見えた。煙草を吸っている様子は無い。
「寒くねぇの?」
 サンジが声を掛けると、ロロノアゾロは片手で握って啜っていたカップをテーブルに置いて答えた。
「寒いな」
 もう片手はダウンジャケットのポケットの中だ。
「煙草吸わねェなら中入れば良いのに。空いてるぜ?軽食もあるし。腹へってんだろ?」
「人待ってんでな」
「デート?」
「まあな」
 なんだよ、待ち合わせて食べに行くのかよ、それとも、彼女の手作り食べに行くの?
 なんだよ、これからデートだってのにそんな仏頂面。
 サンジは大層面白くない気分で、煙草の煙をぷかぁと吐いた。

「お待たせ」
 ソバカス面の人好きのしそうな男が近付いて来た。
 男だ。ロロノアゾロも片手を上げて応えている。
「デートじゃねぇの?」
 サンジが思わす声に出すと、ロロノアゾロは人の悪い笑みを浮かべて立ち上がった。カップの中身を飲み干し、ゆっくりとサンジに近付くと、耳元に口を寄せた。
 甘味の無いコーヒーの匂いがサンジの鼻先を掠め、金属片が触れ合う軽い音が聞こえた。ロロノアゾロの左耳で揺れる三つのピアスだ。
「ホモなもんで」
 そう言うなり、ロロノアゾロはサンジの尻を軽く撫でた。

 サンジは何の反応を返す事も出来ず、固まった。左耳から流れ込んだ微かな湿気と低い声が纏わり付いて離れない。
 再びちりんと音がして、ロロノアゾロが離れたと知れた。

「何?あの子」
 ロロノアゾロの後を追った待ち合わせの男——エースは、サンジを振り返りながら問う。
「二時だか四時だか」
「虹?余事?何それ、謎掛け?」
 ロロノアゾロはうっすらと笑ったまま、何も答えない。
 エースはロロノアゾロに身を寄せ、ひそひそと訊いた。
「お前いつからホモになったの?」
「いや、ちょっとした意趣返しだ」
「えー、やっと俺の求愛に応えてくれる気になったんじゃないの〜?」
 エースはロロノアゾロの腰に手を当て軽く引き寄せる。
「よく言うぜ、俺はタイプじゃないくせに」
 あはは、と軽く笑ってエースは言った。
「まあな、どっちかって言ったら、さっきの子の方が」
 言いながらまた振り返る。
「へぇ、可愛いじゃん、こっち見て真っ赤になってる」
 エースが軽く手を振ると、サンジは慌てて煙草を揉み消し店内に引っ込んだ。
「可ー愛いー」
「止めとけ、病的な女好きだ」
「満更でもなさそうだけど?」
「二度と会う事もねェだろ」

 ロロノアゾロはそう言って、鼻先を掠めた甘いコーヒーと苦い煙草の香り、右手に残る肉の感触を、寒空に振り切った。


20140108,0109,0110,0113,0114

*勿論すぐに再会するんでしょどうせ。お隣に越して来たとか職場が近かったとか行きつけの店が一緒だったとか。そしてめでたく立派なホモカップルになるんだろどうせ。けっ。(なげやり)

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