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『ONE PIECE』の腐妄想(主に戦闘員×料理人)や感想など*大人の女性向け腐要素満載
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お題をお借りしました。海賊ゾロサン『四日後』

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「もうすぐ誕生日なんでしょう?」
「何で知ってんだ」
「あなたによく似合った誕生日だと思ったのよ」
 ロビンちゃんは、ゾロの質問にちゃんとは答えなかった。ゾロもそれで不満は無い様だった。
「今日は何日だ?」
「なのか」
 ロビンちゃんは柔らかく答える。
「明日明後日明々後日弥明後日」
 ゾロは指折り数えた。四日後。11日、か。
「次の島に着いてるかしらね」
「どうだかな」

 潮騒が邪魔をして、それ以上の会話は聞こえなかった。数時間後にログが溜まる、溜まり次第出航になる。次の島にいつ辿り着くか、それはいつもギャンブルだ。食糧が足りますように。出航前に俺はいつも祈る。海と波打ち際のあいだで物陰に隠れて。祈る姿など見せて、クルーを不安にさせてはコック失格だ。というのが実は建前で、不安に駆られて祈っているだなど、男として知られる訳にはいかない、ってのが真相だ。情けねェな、と思わないではないけれど、俺はもうそれを俺に許す事にしたから気にしない。不安になるのもそれを見られたくないのもしょうがねェ。
 閑話休題。
 だから、ここに俺が居ると、二人は知らないで会話している。人目の無い、自然な姿。二人のそれは、穏やかな談笑。
 ゾロが一人で海を眺めにやって来るなどと、思いもしなかった。ロビンちゃんがそんなゾロに近寄って行くなどと、思いもしなかった。意外な二人の姿に、動揺している。動揺する俺も、許してやらなきゃならねェかな。
 一番高いところでぎらぎらとしている太陽が、波をきらきらと輝かせている。
 四日後に、海の上であっても陸の上であっても、ゾロは一つ歳をとる。ルフィは宴だ肉だと騒ぐだろう。チョッパーはケーキを期待するかも知れねェ。ウソップは何か、気の利いたプレゼントを用意してるかも。ナミさんだったらちょっと良い酒を用意したりするかもな。
 ロビンちゃんは、「あなたを気にかける者がここに居る」と、知らせてやっている。
 俺に出来るのは、精々が肉とケーキ。好きなだけ酒を飲ませてやって、それから、奴の頰が綻ぶ料理を、何か。いつもとさして変わらない事しか出来ない。まァ俺たちの間柄で、それ以外はありえねェ訳だけども。


 潮騒に紛れて、ロビンは訊いた。
「何か欲しいものはあるの?」
「欲しいもの?」
 怪訝な顔を隠さず問うと、ロビンは嬉しい秘密を打ち明ける少女の様に告げた。
「誕生日には、プレゼントがもらえるのですって」
 そういった事とはあまり縁がなかったのかも知れない。
「あんたもくれるのか」
「場合によっては」
 少し悪戯めいた顔をしていた。
 欲しい物は、特に浮かばない。物に対する執着は、ほとんど無い。執着は、一つだけ。誕生日に贈られるものでもない。ただ、少しだけ、知りたい事が。アドバイスを求めるのなら、プレゼントをやりたい欲に、応えてやれるだろうか。

「人の心は、どうしたら手に入る」
「手に入れたい心があるのね?」
 そう言われてしまうと、少し違う気もする。
「いや、」
 言ったきり口籠ってしまう。けれどこの女には、すべてお見通しなのだろう。さっきからどこかに目を咲かせている気配がする。心の中まで覗けるものではないだろうが、隠し立ては無駄だと思わせる何かがある。厄介な——いや、覗かれて困る心の方が厄介か。
「そうね、先ずは先方に手に入れたい旨、申し出てみてはどうかしら」
 くすくすと笑っている。
「何を見た」
「きらきら光る海よ。綺麗ね」
 眼前に広がる海は、太陽を受けて確かにきらきらと光っている。眩しくてまともに見ていられない程だ。
「そろそろログは溜まったかしら」
 立ち上がると、長い髪が揺れる。
「心を尽くす事よ。誠実を嗤う人じゃないでしょう?」
 これが人生経験の差か。納得しかけて、まるで『誰の』心を手に入れたいのか知っている口ぶりだと思い至る。
「何で知ってんだ!」
 これには背を向けて手を振るのみだ。つくづく、質問にまともに答える気が無いらしい。


 突然の大声に驚いた拍子に、体が物陰からはみ出した。ゾロは目敏くも俺の存在を発見し、こちらまでやって来る。ロビンちゃんは船に向かって歩き始めている。
「聞いてたのか」
「…ロビンちゃん、誕生日知っててくれたんだな」
「…まあ、そういう事だ」
 どういう事だ。誕生日知ってる間柄って事か。何でちょっと頰染めてんだよ。ちょっと深い仲って意味か。
「誕生日には、プレゼントがもらえるのらしい」
 どこの海でもそうなのだろうか。こいつでもプレゼントは嬉しいんだろうか。
「ロビンちゃんに、何かもらう約束でもしたのか」
「いや、もうもらったっちゃァもらった、か」
「何を」
 俺の見ていないうちにくちづけでも交わしただろうか。


 コックはやや表情を固くした。色好い返事は期待出来ないかも知れない。
「アドバイスを、少し」
「アドバイス?」
「聞いてなかったのか」
「何を?」
 誠実を嗤う奴じゃないのは、もう分かっている。だから、手に入れたいと思った。同時に、だからこそ困らせたくはない。
「人の心を、手に入れる方法について」
 丸くなった目が、海と同じく光った。
「手に入れたい心があるのか」
 数瞬の間の後、返った声は僅かに掠れている。
「おんなじ事、言うんだな」
「おんなじ事?」
 きょとんとした目もまた、海と同じく光る。少しは、俺に興味があると思って良いか?
「いや、何でもない。四日後だ。俺の誕生日」
「そうみてェだな。何か、欲しいもんでもあるのか」
「四日後に、言う」
「それじゃ用意出来ねェよ、次の島に着くかも分からねェのに」
 少し拗ねた顔で、コックは言い募る。俺に何か、やりたいと思ってくれるのか?
「大丈夫だ」
 咄嗟に出る言葉が本心なら、俺はお前の心を手に入れたいのだ。お前が居るなら、海の上だろうが陸の上だろうが関係ない。俺が手に入れられるかどうかは、お前の心ひとつだ。


20180420,0421

utaeさんは11月の7日に、海と波打ち際のあいだで物陰に隠れてこっそり聞いた話をしてください。
#さみしいなにかをかく
https://shindanmaker.com/595943


*ゾロとロビンの関係性に夢見がちなのは許して欲しい。ゾロビン出身なもので…
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